防爆構造の種類

可燃性物質の漏洩などにより生成した爆発性雰囲気と、着火源が共存した場合に爆発・火災が発生します。そのため、爆発・火災の発生を防止するためには、着火源と爆発性雰囲気の共存を避ける必要があります。
しかし、可燃性物質を取扱う工場や事業場では、爆発性雰囲気の生成をなくすことは難しく、また着火源となる電気設備を全く配置しないことも現実的ではありません。
そのため、着火源となる電気設備に防爆対策を講じることが、義務付けられています。

石油精製・石油化学・化学合成プラントなどの可燃性ガスや可燃性液体の蒸気が空気中に存在する可能性がある危険場所で、電気機械器具を設置・使用する場合は、TIIS等の国から許可を受けた登録検定機関による防爆型式検定を受ける必要があります。
また、海外の認証を取得している防爆機器でも、国内で使用する場合は、別途検定を受ける必要があります。

防爆構造の種類一覧

電気機器の防爆構造は、防爆性を保持する為のプロセスにより、主に下記8種に分類されており、「危険場所の種類」により適用可能な防爆構造がそれぞれ定められております。

耐圧防爆構造
記号(d)
全閉構造で容器内部で爆発性ガスの爆発が起こった場合に、容器がその圧力に耐え、かつ、外部の爆発性ガスに引火するおそれのないようにした構造
油入防爆構造
記号(o)
電気機器の電気火花またはア-クを発する部分を油中に収め、油面上に存在する爆発性ガスに引火するおそれがないようにした構造
内圧防爆構造
記号(f)
容器の内部に保護気体(清浄な空気または不活性ガス)を圧入して内圧を保持することによって爆発性ガスが侵入するのを防止した構造
安全増防爆構造
記号(e)
正常時及び事故時に発生する電気火花または高温部を生じてはならない部分に、これらが発生するのを防止するように、構造上及び温度上昇について特に安全度を増加した構造
本質安全防爆構造
記号(i)
正常時及び事故発生に発生する電気火花または高温部により爆発性ガスに点火しないことが公的機関において試験その他によって確認された構造
特殊防爆構造
記号(s)
記号(d. o. f .e. i)以外の構造で、爆発性ガスの引火を防止できることが公的機関において試験その他によって確認された構造
非点火防爆構造
記号(n)
正常運転中及び特定の異常状態で、周囲の可燃性物質が存在する雰囲気を発火させる能力のない電気機器に適用する防爆構造
樹脂充填防爆構造
記号(m)
火花又は熱により爆発性雰囲気を発火させることができる部分が、運転中に発火源とならないように、樹脂の中に囲い込んだ防爆構造

耐圧防爆構造について(記号 d)

容器が、その内部に侵入した可燃性ガス蒸気による内部爆発に対して損傷を受けることなく耐え、かつ、容器のすべての接合部又は構造上の開口部を通して外部の対象とする可燃性ガス蒸気の発火を生じさせることのない電気機器の防爆構造です。
着火源となる電気機器をそのまま容器で覆うなどの構造のため、防爆化が比較的容易であり、特に小形、中形電気機器の防爆化に適しています。
また、他の防爆構造との組み合わせも容易です。

ただし、容器自体に強度を必要とするため、機器の質量が大きくなります。また、爆発自体を抑えるのではなく、内部爆発を許容し、爆発しても外部への影響を与えない構造であるため、爆発の際に内蔵機器が破損する可能性があります。

油入防爆構造について(記号o)

電気機器及び電気機器の部分が、油面の上方又は容器の外部に存在する、爆発性雰囲気に発火することがないような方法で、これらを油に浸す電気機器の防爆構造です。
この構造は通常運転において着火能力のない電気機器および電気機器の部品に適用されます。本質安全防爆構造に適合するように設計された部品以外は着火能力がないことを評価する必要があります。

内圧防爆構造について(記号f)

保護ガスを供給することにより容器内の圧力を外部雰囲気の圧力よりも高い値に保持し、かつ、容器内における可燃性ガス蒸気の濃度を爆発下限界より十分に低いレベルに希釈することによって、爆発性雰囲気の生成を抑える電気機器の防爆構造です。
制御盤などの大型電気機器の防爆化に適した構造です。
分析計などの、他の防爆構造では実現困難な電気機器にも防爆化が可能です。

ただし、必要要件が多いのも特徴です。

  • 保護ガス(空気,窒素ガス等)の供給源が必要
  • 一定時間の掃気(置換)操作が必要(電源投入までに時間を要する)
  • 内圧低下を検知する保護装置が必要

安全増防爆構造について(記号e)

正常な使用中にはアーク又は火花を発生することのない電気機器に適用する防爆構造であって、過大な温度上昇のおそれ並びにアーク及び火花の発生のおそれに対して安全性を増加し、これらの発生を阻止する手段が講じられた電気機器の防爆構造です。
安全増防爆構造の長所は軽量化が図れ、水素やアセチレンなどに適合する爆発等級3(グループⅡC)の防爆電気機器を製作する場合も対応が容易な点にあります。
その代わり、正常運転時には着火源とならない電気機器にしか適用ができず、防爆化できる機器が限定されます。

安全増防爆構造の電気機器を設計する場合は、絶縁性能の確保、絶縁劣化を防ぐことを目的とした容器保護構造の維持、内部部品を含む容器内外表面温度における要件への適合などを考慮する必要があります。

安全増防爆構造について詳しくはこちら

本質安全防爆構造について(記号i)

正常状態及び特定の故障状態において、電気回路に発生する電気火花及び高温部が規定された試験条件で所定の試験ガスに発火しないようにした防爆構造です。
特別危険箇所(ゾーン0)に設置することができ、他の防爆構造に比べて軽量、小型です。
危険区域に設置できる検出器やスイッチが容易に設計できるのも特長です。
携帯機器以外の電気機器には本安関連機器が必要になり、専用の本安配線も必要となります。
大きな電力を消費する電気機器は、本質安全防爆構造には向いていません。

特殊防爆構造について(記号s)

「耐圧防爆構造」「油入防爆構造」「内圧防爆構造」「安全増防爆構造」「本質安全防爆構造」以外の構造で、爆発性ガスの発火を防止できることが、試験等によって確認された構造です。

非点火防爆構造について(記号n)

正常運転中及び特定の異常状態で、周囲の可燃性物質が存在する雰囲気を発火させる能力のない電気機器に適用する防爆構造です。
危険区域としてのリスクが低い第2類危険箇所(ゾーン2)での使用に限定された防爆構造です。
「簡易防爆」とも呼ばれ、防爆としての保護基準を低減することにより、構造や要件の緩和が図られています。

樹脂充填防爆構造について(記号m)

火花又は熱により爆発性雰囲気を発火させることができる部分が、運転中に発火源とならないように、樹脂の中に囲い込んだ防爆構造です。
電気部品や電子回路などを樹脂で覆うことで防爆化が可能です。樹脂が筐体を兼ねることもでき、小型化が可能です。
他の防爆構造との組み合わせが容易にできることも特長です。
ただし、充填用樹脂の使用環境への適合性を考慮する必要があり、樹脂が筐体を兼ねる場合は静電気への考慮が必要になります。

構造規格による防爆記号

防爆構造の構造規格による防爆記号の表記方法

日本では「構造規格」と「国際整合指針」の検定が行われており、それに伴い防爆電気機器に表示する記号が異なっています。

日本電熱の対応防爆構造

日本電熱では、「安全増防爆構造」以外にも、「耐圧防爆構造」「内圧防爆構造」に対応した電気ヒーターを製作することが可能です。但し、製品構成上の主要部材である「シーズヒーター(指針上はスペースヒーター」が「安全増防爆構造」に該当する為、いずれの場合でも「安全増防爆構造」を含んだ記号となります。
例1)電気ヒーターの端子箱を「耐圧防爆構造」とした場合・・・ed2G1
例2)装置全体を「内圧防爆構造」とした場合・・・feG1

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・防爆とは?
・防爆に関する法律について
・防爆の種類
・危険箇所の分類について
・防爆検定について

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